研究概要 |
本年度は当初の予定を変更して,15年度に施行予定の実験を行なった. (1)UVカット透析の一酸化窒素や過酸化脂質に対する影響 全波長の遮光透析の有用性は予備実験で確認できたが,臨床応用を実現するためには有害な波長はカットできるが,血流が確認できる程度の透明性を確保したフィルムあるいは塗料を探索しなければならない.過去のわれわれの知識では,過酸化脂質産生に一番影響するのは紫外光であるので,UVカットフイルムで透析回路とダイアライザーを遮蔽して,予備実験と同様に通常透析と比較した. 5名の患者に説明と同意を得た後,400nm以下の波長を除去できるフイルムを用いてUVカット透析を施行した.1週間後に通常の透析を施行し,両群で血清中の一酸化窒素酸化物(NOx),血圧の変化,過酸化脂質(TBARS, PCOOH)を比較した. その結果,400nm以下の紫外光の除去では,血漿中のNOx, TBARS, PCOOH,血圧の低下を抑制することは出来なかった. (2)実験動物での透析実験 遮光透析の有用性の解明のために動物モデルを作製した.再生セルロースのミニカラムを用いてウサギを体外循環した.3匹を1群として,アルミフォイルで遮光したグループと血液回路に蛍光灯を照射したグループについて経時的に採血した. その結果,ウサギ血漿中のNOx, TBARS, PCOOHは遮光によって何ら変化がみられなかった. まとめ 本年度の研究結果は以下のように要約される. ・遮光透析の効果は400nm以下の紫外光の除去では得られず,一酸化窒素酸化物や過酸化脂質を産生させる光は紫外領域以外の部分に存在する. ・健常ウサギの透析しても遮光透析の解明のためのモデルとしては使えない.おそらく腎機能が正常なので,透析患者のように抗酸化能が低下していないためと思われる.
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