研究概要 |
研究の成果は以下の5点にまとめられ,関連する論文9編,特許1件を出願・公開した. (1)紫外遮光によって全遮光と同じ効果がもたらされるか 臨床応用のためには,有害波長だけ除去し,血流は目視できる帯域カットフィルターによる血液回路やダイアライザーの加工が必要である.パイロットスタディで紫外線除去フィルムの効果を調べたが,なんら効果がみられなかった.この結果は日本大学の研究グループのin vivoの実験とも一致した. (2)光によって発生する1重項酸素の検出 遮光透析が生体に有益な理由の1つの機序として,光関連の活性酸素の産生抑制が推定される.その中で1重項酸素は大きな候補であるが,測定の信頼性が問題であった.そこで1重項酸素が2,2,6,6-Tetramethyl-4-Piperidone (TMPD)をラジカル化させる反応に注目し,ESR装置を用いて定量化する方法を実用化した.この方法の開発は遮光透析の有用性の評価のみならず,creatinineからのmethylguanidine産生にも1重項酸素が関与することが明らかになった. (3)内皮型NOSの活性化における成長因子の効果 透析中の光が影響するNO合成経路の1つの可能性として,成長因子が血管内皮細胞のeNOS発現におよぼす影響を検討した.SD ratの糸球体を単離してVEGF_<165>あるいはIGF-1とincubateし,これらの成長因子がラット糸球体eNOSの発現を増加させNO過剰産生を惹起するかを調べたところ,これらの成長因子はeNOS protein, mRNA, NO_2^-を有意に増加させることが判明した.またwortmanninの抑制効果からPI-3Kの関与が示された. (4)ウサギの遮光透析モデル 遮光透析の有用性のin vivoでの解析のために,血液透析回路とダイアライザーのミニモジュールを作成し,遮光下と蛍光灯下でウサギを体外循環した.その結果は血圧,血中NO代謝物,血中過酸化脂質ともになんら変化は見られず,腎不全患者の遮光透析の動物モデルの作成は成功しなかった.抗酸化能の低下した腎不全状態にしないと,遮光の効果が現れない可能性がある. (5)特許公開中2002-325838 発明の名称 血液浄化療法装置
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