研究概要 |
1.常染色体優性腎性尿崩症の自験例で認められた変異AQP2(763-772del)を、腎由来培養細胞であるMDCK細胞に発現させ、尿崩症発症の機序を検討した。野生型AQP2は頂側膜に局在したのに対して、変異AQP2は側底側に局在した。しかも、共発現細胞では、野生型AQP2と変異AQP2はヘテロオリゴマーを形成し、側底側に存在した。以上より、変異AQP2のドミナントネガティブ効果によるトラフィッキングの障害が尿崩症発症原因と考えられた。この変異はC末端近傍にあり、ストップコドンを約180塩基下流にシフトさせるため、変異AQP2は野生型AQP2にない長いC末端が付加されている。この付加アミノ酸のいずれかの部分が、ミストラフィッキングに関与すると考えられた。 2.常染色体劣性腎性尿崩症で認められた新規の変異AQP2(Q57P, G100V)を、アフリカツメガエルの卵母細胞に発現させた。野生型AQP2は形質膜への発現がみられたのに対して変異AQP2はいずれも形質膜への発現が認められなかったものの、細胞内に蛋白の存在は同定された。したがって、変異AQP2の何らかのトラフィッキング障害が尿崩症発症原因と考えられた。 3.腹膜組織に存在するAQP1の浸透圧にょる調節を検討した、高浸透圧への暴露によってラット腹膜中皮細胞におけるAQP1の発現は、24時間後、48時間後で有意に増加した。また、同時に細胞膜の水透過性の亢進もみられたため、高浸透圧がAQP1の発現調節に関与していることが示唆された。 4.新規水チャネルAQP10をクローニングした。AQP10は小腸のみに特異的に発現していた。機能的検討では、AQP10は水のみでなくグリセオールなどの小分子にも透過性を有していた。
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