1.常染色体優性腎性尿崩症の自験例で認められた変異AQP2(763-772del)を、腎由来培養細胞であそMDCK細胞に発現させ、尿崩症発症の機序を検討した。野生型AQP2は頂側膜に局在したのに対して、変異AQP2は側底側に局在した。しかも、共発現細胞では、野生型AQP2と変異AQP2はヘテロオリゴマーを形成し、側底側に存在した。以上より、変異AQP2のドミナントネガティブ効果によるトラフィッキングの障害が尿崩症発症原因と考えられた。この変異はC末端近傍にあり、ストップコドンを約180塩基下流にシフトさせるため、変異AQP2は野生型AQP2にない長いC末端が付加されている。この付加アミノ酸のいずれかの部分が、ミストラフィッキングに関与すると考えられた。 2.上記1.で得られた知見をもとに、AQP2C末端アミノ酸が頂側膜へのトラフイッキングに関与するかを検討した。46個のアミノ酸残基(AA226-271)より構成されるAQP2C末端のうち。最終C末端よりアミノ酸10個(262-271del)、20個(252-271del)、30個(242-271del)、40個(232-271del)と、C末端の初め1/3(226-240del)、まん中1/3(241-255del)を欠失した変異体を作製し、MDCK細胞に安定発現させた。野生型AQP2は頂側膜に発現していた。一方、262-271delは細胞内に分布し、ERと重なり、lysosomeとも一部重なり、主としてER、一部lysosomeの局在が示唆された。252-271del、242-271del、232-271delも細胞内に分布していた。しかし、最終10アミノ酸を有する226-240del、241-255delは、頂側膜に分布していた。AQP2C末端最終10アミノ酸残基が頂側膜へのトラフィッキングを決定していることが示唆された。
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