研究概要 |
細胞の遊走・活性化能を有するケモカインmonocyte chemoattractant protin-1(MCP-1)/CCL2およびその受容体CCR2に焦点をあて,進行性腎間質線維化機構化への関与ならびに治療標的分子としての可能性について検討した. (1)MCP-1/CCR2のヒト間質線維化への関与 ヒト炎症性腎疾患,糖尿病性腎症ならびに膜性腎症例においてMCP-1/CCR2は主として間質に陽性であった.尿中MCP-1値は尿細管萎縮,間質線維化ならびに浸潤マクロファージと正の相関を示し,進行性間質病変にはたすMCP-1の関与が推測された.このことからMCP-1/CCR2は病因を問わず尿細管間質障害に病態特異的に関与し,共通の進展因子である可能性が示された.これはMCP-1/CCR2が標的分子として治療戦略上重要であることを示唆する. (2)MCP-1/CCR2を治療標的分子とした間質線維化治療の基礎的検討 コントロールマウスに一側尿管結紮術モデルを作成し4,7,14日目にと殺した結果,進行性の間質線維化に加えて,尿細管萎縮ならびにF4/80陽性マクロファージ浸潤が確認された.この過程において,間質内I型コラーゲンはタンパクならびにmRNA発現がいずれも亢進していた.加えて線維化に関与するTGF-β発現も亢進していた.7NDによる遺伝子治療,CCR2欠損マウスならびにpropagermanium投与によりMCP-1/CCR2のシグナル伝達を阻害した.その結果,進行性間質線維化の改善とともに,I型コラーゲン,TGF-β発現は低下した.さらにF4/80陽性マクロファージを主体とする間質内細胞浸潤はいずれのMCP-1/CCR2阻害においても有意に抑制された.さらに主として間質に発現が増強するMCP-1は,MCP-1/CCR2抑制によりその発現が減少した.以上,腎間質線維化に至る尿細管・間質障害の進展過程において,腎疾患の病因を問わない共通進展因子としてのMCP-1/CCR2の意義ならびに治療標的分子としての可能性が示された.
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