研究概要 |
1.培養腎細胞でのPPAR,FXR発現の検討 (1)ヒトの培養近位尿細管上皮細胞HPTECs(三光純薬社より購入)において、肝型と心筋型fatty acid-binding protein(FABP)、PPAR-α,β,γの発現を検討した。Western blot法では、肝型FABPとPPARα,β,γが検出されたが、心型FABP、BABPは検出できなかった。 (2)正常酸素,DMEM下で培養されたHPTECsで,cDNAアレイを用いてPPAR-α,β,γ,FXR,RXRの発現について検討したところ,いづれのmRNAも発現していた。 2.培養腎細胞の炎症性サイトカイン,低酸素に対する反応とPPAR活性化薬の効果 (1)HPTECでは、炎症性サイトカイン(TNF-αなど)と低酸素でplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の産生が増加することを見出した。PPAR-α活性化薬であるフェノフィブラートは、100μMの濃度で同細胞の非刺激状態のPAI-1産生を約30%抑制した。また,同薬は同様の濃度で,TNF-αと低酸素によるHPTECのPAI-1産生を約15-20%抑制し,同細胞に対して抗炎症作用を有することが示された。 (2)HPTECの脂質親和性転写因子の発現をcDNAアレイ(Toyobo, Gene Navigator)で解析したところ、正常酸素下では、FXRとRXRの発現を最大として、PPAR-α,β,γもすべて発現していた。一方、低酸素下では、いづれの脂質親和性転写因子も抑制されており、一部real time PCR法でも確認された。 3.PPAR-a欠損マウスと対照マウスにおける腎間質線維化の程度の比較 米国のJackson LabよりPPAR-α欠損マウスを購入し繁殖させた。飢餓処理で、腎近位尿細管にも脂肪沈着が確認され、脂肪酸の酸化遅延とATP産生低下が推測された。PPAR-α欠損マウスでは、対照マウス(S129)に比して、片側尿管結紮術後の間質線維化とマクロファージ浸潤が増強傾向にあり、現在解析を進すすめている。
|