研究概要 |
近位尿細管における蛋白尿による発現誘導が確認された脳特異的発現が報告されているGlia Maturation Factor (GMF)遺伝子過剰発現系を近位尿細管細胞および線維芽細胞において複数ライン構築し解析した。これらの細胞株は細胞形態の変化、F-actinの重合化、細胞のアポトーシス等、神経系細胞における機能とは異なった共通の変化を細胞にもたらすことを明らかにした。GMF-B強制発現によりTNF-α・AngiotensinII・H202により誘導される細胞内酸化ストレス増加が遷延する事が明らかとなった。これはcopper/zinc-superoxide dismutase活性増加、H202を減少させるcatalase, glutathione peroxidase活性減少と細胞内GSH枯渇によってもたらされる現象であることを示した。これらの細胞内酸化ストレス増加・遷延現象にはp38MAPK系が関与していることも明らかになった。 病態モデル近位尿細管における遺伝子発現パターンの解析より、in vitro系においてサイトカイン受容体下流の細胞内情報伝達系がサイトカイン刺激とは独立して直接活性化されている可能性を見出し検討した。近位尿細管培養細胞ではアルブミン負荷によりJak2およびStat1およびStat5が刺激15分以内に活性化するがStat3活性には変化が認められない事を示した。このJak/Stat系の活性化はN-acetyl-L-cysteineにより阻害された。蛍光により細胞内酸化ストレスがアルブミン負荷により増加する事が示されまた、細胞内酸化ストレス産生系と消去系のバランスの異常が示唆された。これらの検討により、蛋白尿による近位尿細胞管障害には酸化ストレス惹起が関与する可能性が示された。
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