近年、慢性腎不全により透析療法を半永久的に受けなければならない患者が増加し、その数も22万人に達している。さらに、その数は増加の一途であり患者のQOLの低下のみならず、医療経済的にも医療費の高騰という面から大変な問題になっている。そこで、いわゆる生活習慣病から腎不全にならない為の治療法および遺伝学的診断(臓器合併症の感受性や薬剤感受性の差)法の確立が急務である。食塩感受性高血圧症患者および同動物では尿中カリクレイン排泄量の低下が報告されている。我々は、ラットの尿中より精製したカリクレインを静脈注射することにより腎硬化が抑制されカリクレイン-キニン系が腎障害と密接な関係にあることを証明してきた。これらの結果から、ヒト組織(腎)カリクレインの遺伝子多型および点変異が腎炎・腎不全の成因あるいは合併症発症に関連する可能性があると考えた。そこで本研究では当院および関連施設にて健康診断を受けた人あるいは透析中の患者様を対象にヒト組織(腎)カリクレインの遺伝子の多型および点変異について検討した。初年度は、主に患者様のリクルート(説明と同意)および遺伝子の抽出、一部の検体についてすでに平成13年度中に高血圧患者様を対象として検討したSNPSの確認を行った。SNPS解析に関しては現在進行中であるが、現在すでに約900例の腎不全患者の検体を採取した。さらに遺伝子解析を続けているが、1000検体を目標に検体採取を続ける予定である。今後はさらに多くの症例でSNPSの出現頻度を確認すること、そして前向きに患者群を観察し、その血管合併症や予後との関連を検討していく予定である。さらに腎不全患者における他の遺伝子のSNPSとKLK1遺伝子のSNPSの関連やハプロタイプの作成等を検討中である。
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