末期腎不全により透析療法を導入される患者が近年増加し、医療経済的にも医療費の高騰という面から大変な問題になっている。また、腎不全により維持透析を施行することは患者にとって大幅なQOLの低下を伴い、さらに合併症との戦いも日々続くことになる。そこで、生活習慣病や腎炎から腎不全にならない為の治療法および遺伝学的診断(臓器合併症の感受性や薬剤感受性の差)法の確立が急務である。食塩感受性高血圧症患者および同動物では尿中カリクレイン排泄量の低下が報告されている。我々は、ラットの尿中より精製したカリクレインを静脈注射することにより腎硬化が抑制されカリクレイン-キニン系が腎障害と密接な関係にあることを証明してきた。これらの結果から、ヒト組織(腎)カリクレインの遺伝子多型および点変異が腎炎・腎不全の成因あるいは合併症発症に関連する可能性があると考えた。そこで本研究では当院および関連施設にて健康診断を受けた人あるいは透析中の患者様を対象にヒト組織(腎)カリクレインの遺伝子の多型および点変異について検討した。平成14年度は、主に患者様のリクルート(説明と同意)および遺伝子の抽出、一部のSNPSの確認を行った。平成15年度は研究参加者のさらなる追加と対照群として正常者の参加を募り、腎不全患者935名(参加中止者を除く)、正常者2000名以上の参加を得ることができた。現在、各症例のSNPS解析を施行中であるとともに、臨床データの収集および収録中である。また、KLK1遺伝子の5'上流域のSNPとエクソン4のSNPが連鎖することを発見し、現在その意義を検索中である。今後は各SNPSの出現頻度を症例-対象研究にて確認すること、そして前向きに患者群を観察し、その血管合併症や予後との関連を検討していく予定である。さらに腎不全患者における他の遺伝子のSNPSとKLK1遺伝子のSNPSの関連やハプロタイプの作成等を検討中である。
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