近位尿細管のタイトジャンクションに発現しているクローディン2の細胞間短絡路のNaCl輸送における役割を解明するため、ジーンターゲティング法により、クローディン2遺伝子のノックアウト(KO)マウスを作成し、その野生型(WT)マウスを対照として、近位尿細管の形態と機能を、それぞれパラフィン切片法による光学顕微鏡観察、超薄切片法、フリーズフラクチャー法による電子顕微鏡観察と、単離・灌流した近位尿細管の正味のNa、Cl、水輸送量、経上皮抵抗およびタイトジャンクション抵抗、細胞間短絡路のNa/Clの透過性の比、および腎クリアランス法によって、比較した。光学顕微鏡および電子顕微鏡による形態的解析では、KOマウスの近位尿細管上皮細胞においてもタイトジャンクションが存在することが観察され、WTマウスと比較してその構造に著しい差は見られなかった。機能的解析では、近位尿細管上皮を介したNa、Cl、水再吸収量は、WTマウスに比し、KOマウスで有意な低下を認めた。近位尿細管の経上皮抵抗およびタイトジャンクション抵抗は共にWTマウスに比しKOマウスで約2倍の増加を示したが、管腔側膜抵抗、基底側膜抵抗は不変であった。WTマウスの近位尿細管の細胞間短絡路はNa透過性が優位であるのに対し、KOマウスではCl透過性が優位であった。腎クリアランス法では、分画Na排泄、分画Cl排泄、分画水排泄は、2群のマウスで不変であった。一方、furosemide、bendroflumethiazide、amilorideを同時投与し、近位尿細管より遠位部のNa/Cl輸送を抑制すると、分画Na排泄、分画Cl排泄、分画水排泄はいずれも、KOマウスで有意な増加を示した。以上より、クローディン2は、近位尿細管の細胞間短絡路の抵抗を小さくし、この経路を介したNa/Cl再吸収、特にNa選択性の維持に重要な役割を担っていることが考えられた。
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