P-糖蛋白質(P-gp)を欠損したマウスとその野生型マウスの近位尿細管S2セグメントをcollapseした状態で灌流し、細胞容積調節におけるP-gpの役割とP-gpによる細胞容積調節における基底側膜Na/H交換輸送体(NHE)の関与について検討した。結果は以下の通りであった。 1.P-gp活性非存在下では、mannitolによる高浸透圧刺激で調節性容積増加(RVI)が出現するがP-gp活性存在下ではこれは起こらない。一方、低浸透圧刺激時にはP-gp活性の有無に関らず調節性容積減少が出現する。 2.mannitolによる高浸透圧刺激で出現するRVIには一部基底側膜のNHEが関与している。 3.P-gp活性の有無に関らず、ureaによる高浸透圧刺激ではRVIは観察されず、細胞容積は一過性に縮小後、速やかに刺激前値に復帰する。 4.P-gp活性非存在下で出現するRVIはprotein kinase C(PKC)の活性化を介して起こる。 5.microtubule、microfilament、およびwortmannin感受性・LY294002非感受性phosphatidylinositol 3-kinaseがRVIの出現に関与している。 6.P-gp活性非存在下でmannitolによる高浸透圧刺激を与えるとPKCを介して基底側膜のNHEが活性化される。 7.P-gp活性の有無に関らず、ureaによる高浸透圧刺激を与えるとtyrosine kinaseを介して基底側膜のNHEが活性化される。
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