ウサギ腎・皮質集合管を単離潅流し、in vitroにおいて浴液pHを低下させたとき(in vitro acidosis)の、β間在細胞内pHの変化を経時的に観察した。さらに管腔内液または浴液内のクロライド濃度を減少させたときの細胞内pHの変化をin vitro acidosis前後で比較した。in vitro acidosis前には管腔内液のクロライド濃度を減少させると細胞内pHが平均0.4単位増加したが、in vitro acidosis後には、この変化が消失した。ここに、代謝性アシドーシスモデルとしてシクロスポリンを慢性に負荷した動物を作成し、皮質集合管での変化をコントロール動物のものと比較した。シクロスポリン負荷集合管では、管腔内液のクロライド依存性のpH変化が消失し、正味の重炭酸分泌も消失していた。また、浴液内クロライド濃度を減少させたときの細胞内pHの変化量もコントロール動物のものと比較して有意に増加していた。また、この尿細管に抗hensin抗体および蛍光2次抗体を添加して、共焦点顕微鏡で観察すると、hensin蛋白の細胞外基質への沈着が有意に減少していた。以上および昨年度に示したことを総合すると、シクロスポリン投与による遠位形尿細管性アシドーシスにおいては皮質集合管β間在細胞の管腔膜anion exchnagerがdown regulationされて重炭酸の分泌が減少するが、この反応にはhensin蛋白の細胞外基質への沈着減少を伴うこと判明した。このことは、アシドーシス時の酸排泄増加現象にhensin蛋白が関与することを更に示すものである。
|