1、分子間相互作用解析装置を使い、ブタ胃粘膜より抽出したIgA1結合性ペプチドをHPLCで分析したところ多数のピークが得られた。部分精製されたペプチドのうちIgA1に強く結合する成分を分離するため、糖鎖不全IgA1を固定したHPLCカラムを作成し基礎的な検討を進めている。 2、上記HPLCカラムを使い血清のIgA1-BPの迅速定量を進めている。オープンカラムで得られたIgA1-BPをHPLCにかけた結果、結合が再確認され、糖鎖不全IgA1に強く結合し高塩濃度で溶出される成分が精製された。 3、ヒト血清より糖鎖不全IgA1カラムに結合するタンパク質を調製し、等電点電気泳動とELISA、糖鎖分解酵素、糖転移酵素を組み合わせ分析した。その結果IgA1-BP中に含まれるIgAがシアル酸の欠損した糖鎖不全IgA1であることが確認された。IgA1-BP中のIgAの含量はIgA腎症患者で有意に高く、患者の血清中に糖鎖不全IgA1が高濃度で存在することが示された。 4、IgA腎症と扁桃摘出の関係が報告されている。特に扁摘患者で血中IgA1が有意に低下するという報告、またIgA腎症患者の扁桃ではIgA産生細胞が相対的に増加しているという報告を受け、ここでは扁摘組織よりIgAを抽出し上記方法で分析を行った。その結果扁桃で産生されるIgA1は糖鎖不全IgA1であることが示され、IgA量も患者で有意に高い値を示すことから患者の扁桃では糖鎖異常IgA1の産生亢進が起きていることが明らかとなった。 5、IgA1の重鎖の糖鎖異常のタイプを調べる目的でO-グリカン/N-グリカン比(O/N比)を導入し、各種酵素処理と組み合わせることにより分析を行った。その結果健常者、患者ともにアシアロ型Thomsen-Friedenreich(TF)抗原に富むことがわかり、患者でその割合が有意に高いことがわかった。
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