研究概要 |
CLCN5遺伝子変異と発現チャネルの細胞内ソーティング分子機構の関連性を明らかにすることは、同遺伝子異常に伴う疾患(Dent病)の病態を解明する上で重要な課題である。今回、C末を認識する抗ClC-5モノクロナール抗体(MAb)に加え、新たにN末側を認識するMAbを作成して、Dent病と遺伝子診断した症例の変異型とチャネルソーティング障害機構について検討した。これまでに検討したClC-5のD5-D6ループに存在するミスセンス変異(S270R,R280P)に加え、強制発現系で機能障害が確認されたClC-5のC末側変異(658:del C)と新たに同定した変異(2370/1 ins A)を対象とした。野生型と人為的突然変異法で作製した変異型を発現ベクターへ挿入し、Lipofection法を用いて哺乳類培養綱胞(CHO-K1)へ形質導入し安定的発現系を樹立した。核酸と蛋白レベルで発現の有無を確認し、発現蛋白の細胞内局在を細胞内小器官の特異的タンパクを指標に抗ClC-5 MAbsを用いて二重免疫染色法で解析した。さらに、変異導入に伴う発現タンパクの違いについて、二次元電気泳動法で野生型と比較検討した。ClC-5のD5-D6ループに存在するミスセンス変異(S270R,R280P)は最終標的部位、初期エンドゾーム、までの細胞内ソーティングが障害されないのに対して、C末側のフレームシフトを伴う2つの変異型は共に細胞内の粗面小胞体(ER)に留まり、初期エンドソームには発現を認めずソーティング障害を生じていることを明らかとなった。さらに、2370/1 ins A変異型導入細胞で、野生型と異なるタンパクが発現することを二次元電気泳動法で同定した。以上より、CLCN5遺伝子変異に伴う発現チャネルの細胞内ソーティング障害に多様な分子機構の存在が明らかとなった。
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