慢性糸球腎炎や糖尿病性腎症は持続する蛋白尿を特徴とし、これらは末期腎不全の原疾患として最多である。蛋白尿はこれらの疾患の病勢の指標となり、また持続する蛋白尿は尿細管の変性を惹き起こす。尿細管の硬化性変性は原尿の尿細管における再吸収機能を低下させ、糸球体における濾過圧を低下させ、糸球体硬化を起こすと考えられている。さらに尿細管間質の硬化病変の過程において、尿細管腎間質における単球浸潤および脈管系の増殖の関与が想定されている。近年、慢性腎不全に進行した腎間質の脈管においては血管の増殖が優位であるとする説と一方血管の増殖は認められないとする2つの相反した見解が報告されている。 糸球体細胞膜成分を抗原としてモノクローナル抗体を作製しLF3抗体(抗podoplanin抗体)、JG12抗体(抗糸球体内皮細胞・血管内皮細胞抗体)を得た。JG12抗体の抗原はHPLC法によりaminopeptidase Pであることが明らかになった。また、これらの抗原を精製し家兎にそれぞれを免疫しポリクローナル抗体を作製した.これらの抗原の腎における局在を二重免疫標識法で明らかにしたところ、LF3抗原は糸球体上皮細胞および腎間質のリンパ管内皮細胞に、またJG12抗原は糸球体内皮細胞および間質の血管内皮細胞に特異的に存在することが明らかになった。 今回、腎硬化性病変のモデルとして5/6腎摘ラットを用いて間質硬化性病変部位における脈管系の同定を検討した。その結果硬化部腎間質には明らかにLF3陽性の脈管が増加していることが明らかになり、硬化性病変部位におけるリンパ管の増殖が単球細胞の浸潤に引き続き惹起されていることが明らかとなった。リンパ管内皮細胞は白血球走化因子を分泌していることより間質に浸潤した白血球を腎外に流失させ腎間質の細胞性免疫による攻撃から免れる働きがあることが示唆された。
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