研究概要 |
尿細管間質障害における尿細管上皮細胞の細胞周期関連蛋白の発現とその意義について (目的)進行性腎障害では尿細管肥大を認めるが、まだその意義は不明である。一方、肥大尿細管上皮細胞はG1期に静止しており、細胞周期関連蛋白p21,p27などの発現が重要と考えられている。したがって、尿細管上皮細胞の再生を考える上で尿細管間質障害における尿細管上皮細胞(TEC)の細胞周期関連蛋白の発現とその意義を解明することは重要と考えられる。そこで、糖尿病発症(db/db)マウスで片側尿管結紮モデル(UUO)を作成し、TEC内のp27の発現を解析し、間質病変の発症におけるその意義を検討した。 (方法)8週齢時db/dbマウスおよびコントロール(+m/+m)マウスにUUOを施行し、経時的に腎組織内p27,PCNA,α-SMAおよびマクロファージの浸潤度を検討した。 (結果)UUO施行後2日目TEC内のp27の発現はdb/dbおよび+m/+mともUUO腎で対側非UUO腎に比し増強していた。UUO腎TEC内のp27発現はdb/dbで+m/+mに比し有意に強く、8日目+m/+mのUUO腎内p27発現は対側腎と同じレベルに減少したが、db/dbのUUO腎ではp27発現増強は遷延していた。一方TEC内のPCNA発現には両群間で有意な差を認めなかった。腎間質内マクロファージ数は両マウスともUUO腎で対側腎に比し増加したが、db/dbでは+m/+mに比し有意に少なく、この傾向は8日目にも認めた。また、8日目のUUO腎間質内α-SMA発現は+m/+mに比しdb/dbで有意に減弱していた。 (結論)尿管結紮刺激により尿細管上皮細胞でp27の発現増強を認め、その発現は尿細管肥大とともに間質病変の発症に関与していることが示され、尿細管上皮細胞の再生を考える上で重要な因子であると考えられた。
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