糖尿病性腎症モデルマウスにおける腎障害進展因子と組織幹細胞による組織修復への関与に関する検討 (方法)9週齢のC57BL/KsJ-db/db(db/db)、そのコントロールマウス(+m/+m)を麻酔下で左片側尿管を結紮(UUO)し経時的に採尿、採血および腎内p27、PCNA、α-smooth muscle actinの発現および間質内マクロファージ浸潤の程度を組織学的に解析した。また腎前駆幹細胞としてCD133陽性細胞を特異抗体による免疫組織学方法で同定した。 (結果)UUO後両マウスで腎尿細管上皮細胞においてp27の発現は増強し、その増強効果はdb/dbマウスにより強く認め、またp27の発現は遷延していた。一方PCNAの発現は両マウス間で明らかな差を認めなかった。間質炎症反応について検討した結果、+m/+mマウスではUUO腎間質内炎症細胞浸潤および線維化の増強を認めたのに対し、db/dbマウスではUUO腎間質線維化の程度は非UUO腎に比較して増強を認めたものの、その程度は+m/+mマウスに比し有意に軽度であった。つぎにUUO腎間質内の腎組織幹細胞の関与を検討した結果、非UUO腎間質内では近位尿細管上皮細胞周囲を中心にCD133陽性腎前駆幹細胞が認められたが、UUO腎間質内ではその存在は消失していた。 (結語)糖尿病性腎症では尿管結紮刺激により尿細管上皮細胞におけるp27の発現が増強され、特異的な尿細管間質反応性を示すことが示唆された。さらに、尿管結紮腎では炎症細胞あるいは線維化により腎前駆幹細胞数が減少し、尿細管上皮細胞や間質細胞の修復過程が障害されている可能性が考えられた。
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