尿酸は、尿細管で再吸収と分泌の両方向性に輸送が行われる等、複数の輸送体を介した複雑な輸送が想定され、その輸送体の実体は明らかにされていなかった。生体内で、尿酸は有機酸として存在することから、有機陰イオントランスポーターにより輸送される可能性が想定されていた。最近我々は有機陰イオントランスポーターであるhOAT1が尿酸を輸送することを明らかにした。今回、ヒトゲノム概要配列を元に、hOAT1のファミリーである近位尿細管基底膜側に存在するhOAT4遺伝子の近傍より、尿酸の再吸収に働くヒト腎臓尿酸トランスポーター(urate transporter : URAT1)をコードする遺伝子SLC22A12を同定した。 URAT1は、膜12回貫通型のトランスポーターであり、ノーザンブロットの結果より腎臓に特異的に発現していた。また、ヒト腎組織切片の免疫染色により、近位尿細管管腔側に局在していた。URAT1をXenopus leavisの卵母細胞に発現させた取り込み実験により、URAT1は時間依存性に尿酸の取り込み増加を示した。その取り込みは、担体輸送の特徴を有し、ミカエリス定数は、370μMであった。乳酸、ピラジンカルボン酸、ニコチン酸によりURAT1を介した尿酸輸送がtransstimulationされることから、URAT1はこれら有機アニオンとの尿酸/アニオン交換輸送体であることが明らかになった。また、尿酸排泄促進作用を持つプロベネシドやベンズブロマロンによりURAT1の尿酸輸送は阻害され、尿酸再吸収亢進作用を持つピラジンカルボン酸をあらかじめ卵母細胞に負荷しておくことにより尿酸の取り込みが増加したことより、URAT1がこれら尿酸動態に影響を与える薬物の作用点であることも証明した。 腎臓における尿酸の再吸収が障害されている、または排泄が促進している遺伝子疾患である腎性低尿酸血症は、URAT1が責任遺伝子である可能性が考えられた。そこで、3例の腎性低尿酸血症症例を解析したところ、3例ともSLC22A12に遺伝子異常を認めた。この事実から、少なくとも一部の腎性低尿酸血症の責任遺伝子がURAT1であることが明らかになった。
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