【目的】胎児期の成長と壮年期の成人病との因果関係を主張するBaker仮説における胎児期反応を観察するため、慢性低酸素子宮内環境に長期間おかれた子宮内胎児発育遅延胎児の子宮内における生理学的反応や内分泌環境の観察をした。 【方法】妊娠100日(満期145日)の妊娠中期サフォーク種妊娠羊4頭を用い(内2頭は実験開始前に子宮内胎児死亡となったため実験から除外)、母獣麻酔下に、胎仔頚動静脈にカテーテルを挿入し、心電図電極を装着し慢性胎児実験モデルを作成した。術後4日以上経過した後、母獣気管内に窒素を流入させることにより母獣を低酸素状態とし、胎仔動脈血酸素分圧をおよそ25mmHgから15mmg程度に低下させた。この低酸素刺激を20-30日間与え、胎児内分泌反応観察した。 【結果】(1)胎仔血中アミノ酸:必須アミノ酸のうち、分枝鎖アミノ酸は持続低値(コントロール比;50-80%)を示し、分枝鎖アミノ酸以外の必須アミノ酸およびその他のアミノ酸は低酸素開始後減少(コントロール比;20-50%)し、10日目以降に低酸素刺激前の値に戻った。 (2) IRI(Immunoreactive insulin)は低酸素刺激中持続上昇傾向を示した。Insulin Growth Factor-1(IGF-1)は持続高値(コントロール比;100-250%)を示した。 【結論】長期間母獣を低酸素状態下におく胎仔低酸素状態による子宮内胎児発育遅延モデルでは、胎仔血中アミノ酸(特に分枝鎖アミノ酸)は低値を示したが、IRIやIGF-1といった糖代謝系は亢進していることが示唆された。今後、マイクロスフェアを用いた胎盤梗塞モデルと比較検討する。
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