【目的】胎児期の低栄養・低酸素と壮年期の成人病発症の因果関係を主張するBarker仮説における、胎児期の反応を観察するため、妊娠羊胎仔実験モデルを用いて慢性低酸素環境下における胎仔アミノ酸代謝と圧受容体反射(BR)の変化について検討した。 【方法】妊娠100〜103日の妊娠羊9順に対し、母獣ケタミン麻酔下で胎作図頚部を子宮より露出、胎仔顛動静脈にポリビニールカテーテルを挿入。胎仔を子宮内に戻し術後4-5日目から母獣気管内留置カテーテルより窒素ガスを流入、胎仔動脈血酸素分圧を20mmHgから15mmHgに低下させ持続低酸素状態とした。低酸素刺激開始後1、5、10、15、20日目に血中アミノ酸濃度を測定した。また、BRは、norepinephrine5〜7.5μgを羊胎仔の外頚静脈から投与し、平均血圧変動(ΔMAP)と心拍数変動(ΔFHR)を計測し、AFHR/ΔMAP(BR)を算出した。さらに、心拍数基線細変動の変化により、sleep state(SS)とactive state(AS)とに分けてBRについて検討した。 【成績】1.慢性低酸素胎仔はコントロールに対し血中分岐鎖アミノ酸濃度は低下傾向を示した。2.糖原生アミノ酸のうち慢性低酸素胎仔がコントロールに対して低下傾向を示したのはアラニンだけであった。3.日動とBRとの間に、AS・ssのどちらにも負の相関を認めた。SSよりASのほうがBRの反応性が高かった。 【結論】1.胎仔の蛋白合成、エネルギー変生に必要とされる分岐鎖アミノ酸血中濃度が他のアミノ酸に比較して、顕著に慢性低酸素胎仔において低下傾向を示した。2.母獣飢餓状態にある胎仔において血中濃度が有意に低下するとされる糖原生アミノ酸は慢性低酸素胎仔においては明らかな低下傾向を示さなかった。3.慢性低酸素環境下羊胎仔のBRの反応性は、日齢が若いほど高く、ASの方がSSより高かった。
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