研究概要 |
Tat-binding protein-1(TBP-1)は、human immunodeficiency virus type Iの強力な転写活性化因子であるTatに結合する蛋白として同定され、その後ユビキチン化された細胞内蛋白を分解する26Sプロテアソームの19S制御サブユニットの構成蛋白であることが判明している。近年、核内ホルモン受容体によるリガンド依存性転写活性化にこのプロテアソーム系が深く関与する可能性が示唆されている。本研究では、TBP-1ならびにTBP-1に結合する機能未知の蛋白TBP-1-interacing protein(TBPIP)による核内受容体転写活性化における役割に付いて更に検討を進めた。TBP-1はヒトにおいて種々の組織にユビキタスに発現していたが、TBPIPは睾丸のみに発現を認めた。各種腫瘍細胞株においてはTBP-1、TBPIPともに過剰発現していることが判明した。TBP-1は、TRに特異的な転写共役因子であることを以前報告したが、TBPIPの特徴的な正常組織発現より、TBP-1がアンドロゲン受容体(AR)の共役因子としても機能する可能性が考えられた。TBP-1、TBPIPともにARによるリガンド依存性転写活性化を容量依存性に増強し、両者は相乗的に作用した。In vitro binding assayでは、TBP-1、TBPIPともにARに直接結合し、TBP-1とTBPIPが直接結合することも確認した。変異TBP-1を用いて解析した結果TBPIPはTBP-1のアミノ末端側に存在するcoiled coil領城に結合することが判明した。TRやARによるリガンド依存性転写活性化におけるプロテアソーム系の役割を検討する目的で、プロテアソーム阻害剤MG132の両核内受容体による転写活性化に及ぼす影響を検討した。MG132,は、TRならびにARによるリガンド依存性転写活性化を有意に抑制し、更にTBP-1やTBPIPによる転写増強作用も強く阻害した。以上の成績より、TBP-1ならびにTBPIPはTRやARに直接結合し、それらの転写活性型共役因子として機能し、その作用には細胞内分解系であるプロテアソーム系が関与することが示唆された。
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