研究概要 |
ヒトビタミンD依存性くる病の動物モデルであるビタミンD受容体ノックアウトマウス(VDR KO)は低カルシウム血症、低リン血症、副甲状腺機能亢進症、くる病、骨軟化症と脱毛(毛再生障害)を示すが、血漿電解質の値を補正することにより、脱毛以外の異常はほぼ正常化する。このことは、毛髪の維持には、VDRの存在が不可欠であることを示している。 我々は、これまで、VDR KOにおいては、初回の発毛は正常であるが、毛周期に特異的な異常が存在し毛髪を維持できない、という際だった特徴を認め、脱毛のi山VIVOでの責任細胞が表皮細胞であることを示し,さらにこの脱毛は、既知のリガンドであるビタミンD非依存性の受容体機能異常の結果であることを明らかにしてきたが、表皮細胞におけるVDRのターゲットジーンは不明のままである. 脱毛の原因となるVDRのターゲット遺伝子の同定は、毛周期維持の機序の解明に繋がり臨床的に癌化学療法に伴う脱毛や、一般的な脱毛の予防あるいは治療の糸口となり得る。また我々の研究は、核内受容体の一つであるVitamin D受容体の新しい作用機序、リガンド非依存性の生理作用の解明に繋がる可能性がある。 今回、毛周期の維持に不可欠な、VDRのターゲットジーンを同定すると共に、VDRのビタミンD非依存性の生理的役割を明らかにすることを目的とし、VDR KOを用い、以下のin vivoでの検討を行った。 生後20日のVDR KOおよび正常マウスに対し、機械的脱毛刺激により発毛誘導を行った。24時間後に各皮膚組織を採取し、RNAを抽出した。cDNAマイクロアレイ(1回)および、オリゴマイクロアレイ(2回)を用いることにより、両者で発現量の違う複数の因子を同定した。 今後、発現量の違う因子のin situ hybridization等、さらに詳細に検討していく予定である。
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