研究概要 |
糖尿病や肥満症においては厳密なカロリー制限や運動療法などが必要となるが、継続困難な場合が少なくない。GH secretagogue受容体(GHS-R)リガンドのグレリンが胃より同定され、GH分泌や食欲の促進効果に加え、我々は肝でインスリンの代謝シグナルに拮抗することを報告した。そこで今回、肝におけるGHS-R遺伝子発現調節と、栄養素の影響を検討した。既報の種々サイズのGHS-R遺伝子5'上流をpGL3-Basicに組み込み、培養細胞に一過性発現し、ルシフェラーゼ(Luc)活性をデュアル法で測定した。ラットインスリン産生細胞RIN-5Fでは活性を認めなかったが、ヒト肝細胞HepG2では-1243, -743, -669, -531, -445GHS-R/Lucは、各々pGL3-Basicの活性に対する比で4.2±0.26, 103±0.1, 89±6.9, 37.6±1.8, 16.2±0.61であった。さらに-608GHS-R/Lucを検討したところ、-669GHS-R/Lucとほぼ同様であり、GHS-R遺伝子上流-608〜-531bpに細胞特異的転写調節領域があると考えられた。この結果は下垂体細胞におけるGHS-R遺伝子発現調節領域よりやや近位であった。今後転写調節蛋白の検討が必要である。一方、n3系不飽和脂肪酸エイコサペンタエン酸EPAがインスリンの代謝シグナルに協調的であることを報告したが、これを培養HepG2細胞に100μM, 24時間添加した結果、-445, -608GHS-R/Lucにおいて各々非添加群の73±1.6, 76±4.8%と軽度の抑制傾向を示した。また摂取量が内臓脂肪面積と逆相関したビタミンC, E(未発表)については、100nMビタミンC、24時間の添加は-608, -669GHS-R/Lucを各々141±19.3, 143±35.5%に増加させる傾向が見られた。以上より有意な調節因子はまだ認めていないが、この系により糖尿病、肥満症の発症予防や治療に有用な栄養素や薬剤の候補物質の探索が可能と考えられる。
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