グレリン受容体遺伝子転写調節機構を利用した代謝改善栄養素ないし薬剤の探索

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14571070
• 研究機関: 兵庫県立看護大学
• 研究代表者: 加治 秀介 兵庫県立看護大学, 看護学部, 教授 (90224401)
• 研究分担者: 坂下 玲子 兵庫県立看護大学, 看護学部, 助教授 (40221999) ; 桐村 智子 兵庫県立看護大学, 看護学部, 助手 (50305695)
• キーワード: グレリン / 受容体 / 遺伝子転写 / HeP G2細胞 / オレイルエタノールアミド / 不飽和脂肪酸 / インスリン感受性 / アディポネクチン

研究概要

各種栄養素、薬剤のグレリン受容体遺伝子転写活性への影響 今回は以前に転写活性を確認したグレリン受容体(GHSR)遺伝子上流(-743)をルシフェラーゼレポーター遺伝子に連結させ(GHSR/Luc)、培養ヒト肝細胞HepG2に一過性に発現、ルシフェラーゼ活性に対する種々の栄養素、ホルモン、薬剤の影響を検討した。OEA(Oleylethanolamide)はカナビノイドアナログで、末梢から視床下部を介して摂食抑制効果が報告された脂質で、1-100μMのOEAは軽度ながら有意かつ用量依存的にGHSR/Luc活性を増加させた。我々は以前グレリンが肝臓で糖新生酵素遺伝子発現を高めることを報告しており(JBC277,5667-5674,2002),OEAによるGHSR遺伝子発現のUp-regulationは摂食抑制時に肝糖を供給する意義が示唆される。11種の植物成分からなる市販の減肥茶が服用者に糖尿病の誘発をみたため、GHSR/Luc活性を検討したが1〜100倍希釈の減肥茶の添加では明らかな影響を認めなかった。この減肥茶を培養RIN-5F細胞に添加したところグルコースによるインスリン分泌を抑制した。また肥満、糖尿病と関連の深いインスリンやレプチンはいずれもGHSR/Lucに影響を認めなかったが、PPARγリガンドのトログリタゾン0.1〜10μMはGHSR/Luc活性の抑制傾向を認め、インスリン感受性改善機序の一部に肝臓のグレリン感受性抑制が考えられた。また下垂体細胞ではGHSRがないため、フォルボールエステルとBayK8644でグレリンシグナルを活性化することでGHSR遺伝子抑制を報告したが(BBRC55,175-181,2001)、HepG2細胞ではグレリン添加ではGHS-R/Luc活性は変化しなかったものの、1〜100nM GHRP-6では軽度ながら抑制された。なお前年度に示した活性と関連の深いGHSR遺伝子上流(-608-534bp)を蛍光ラベルしたDNAとHepG2からの抽出核タンパクとの特異的結合をゲルシフトアッセイで確認した。
不飽和脂肪酸のインスリン感受性、血中アディポネクチン値への影響 前年度に報告したようにエイコサペンタエン酸は培養HepG2細胞におけるGHSR/Luc活性を抑制した。そこで若年女性に不飽和脂肪酸(PUFA)の豊富な食品摂取を1ヶ月間にわたって増やしたところHOMA-IRは有意に低下し、血中アディポネクチン値はそれに先行して有意に上昇した。PUFAのインスリン感受性改善作用の一部に、肝でのグレリン感受性抑制に加えて脂肪細胞からのアディポネクチン分泌促進の関与が示唆され、PUFAは代謝改善栄養素の1有力候補と考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Yoshioka S, Okimura Y, Takahashi Y, Kaji H et'al.: "Up-regulation of mitochondrial transcription factor 1 mRNA levels by GH in VSMC."Life Sciences. 12・74. 2097-2109 (2004)
• [文献書誌] Iida K, Okimura Y, Takahashi K, Inomata S, Kaji H et al.: "A variety of phenotype with R161Q germline mutation of the von Hippel-Lindau tumor suppressor gene in Japanese kindred."International Journal of Molecular Medicine. 13・3. 401-404 (2004)
• [文献書誌] Kaji H, Chihara K: "Direct causes of death in Japanese patients with hypopituitarism as analyzed from a nation-wide autopsy database."European Journal of Endocrinology. 150. 149-152 (2004)
• [文献書誌] Fumoto M, Okimura Y, Iguchi G, Kaji H et al.: "Cloning of a protein binding to the most proximal Pit-1 binding element of prolactin gene from human pituitary cDNA library."Molecular and Cellular Endocrinology. 30・207. 31-38 (2003)
• [文献書誌] Sakatani T, Kaii H, Takahashi Y, Iida K, Okimura Y et al.: "Lactogenic hormone responsive element reporter gene activation assay for human growth hormone."Growth Hormone & IGF Research. 13. 275-281 (2003)
• [文献書誌] Kishimoto M, Okimura Y, Nakata H, Kaji H et al.: "The R271W mutant form of Pit-1 does not act as a dominant inhibitor of Pit-1 action to activate the promoters of GH and prolactin genes."European Journal of Endocrinology. 148. 619-625 (2003)