研究概要 |
レプチンは脂肪細胞が産生する摂食調節因子であるが、神経内分泌系の機能調節にも重要な役割を果たしていることから、栄養と内分泌系をリンクするメディエーターの候補として注目されている。本研究から得られた主なる新知見は下記のとおりである。 1.血中レプチン濃度の雌雄差発現機構。ヒトおよび動物において、血中レプチン濃度は雄よりも雌が高値を示すが、この機構の詳細は明らかではない。本研究から、雄ラットがその新生児期にアンドロゲンへの暴露を受けることが、血中レプチン濃度を下降させる一因であることが示唆された。 2.レプチンによるプロラクチン分泌促進機構。この現象の詳細については不明であったが、下記の新知見を得た。ドーパミンやセロトニンなどの脳内活性アミンの関与はなく、またvasoactive intestinal peptide, prolactin-releasing peptide,およびβ-endorphinなどの関与も否定的であった。唯一、α-melanocyte-stimulating hormoneが有意に関与していることが示唆された。 3.炎症性サイトカインによる視床下部・下垂体・性腺系の抑制機構。同現象に関与するサイトカインの詳細については不明であった。本研究から、ラット視床下部からのgonadotropin-releasing hormoneの分泌に対して、interleukin-1βとtumor necrosis factor-αはほぼ同等の抑制効果を有するが、interleukin-6は有意な効果を発揮しないことが示された。 4.レプチンによる成長ホルモン分泌と脳内メラノコルチン受容体。成長ホルモン分泌に関するメラノコルチン受容体の関与を検討したところ、メラノコルチン3および4受容体のいずれもが有意な役割を果たしていないことが示唆された。
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