研究概要 |
1.COUP-TFI,Ubc9の副腎における発現の検討 ヒト組織を用いたNorthern blotにより、COUP-TFI,Ubc9の組織分布を検討したところ、副腎皮質、精巣、卵巣などのステロイド産生組織に比較的高発現を認めた。そこで、ラット副腎を用いて、COUP-TFI,Ubc9の蛋白レベルの発現を免疫組織化学により検討した。その結果、Ubc9の発現は生後2週目では副腎皮質の球状層・束状層・網状層の3層すべての細胞の核に局在を認めた。そして、生後3週目、8週目と発達が進むにつれて、球状層に限局した局在に変化を認めた。一方、COUP-TFIは副腎皮質3層すべての細胞の核に局在を認めた。さらに、Sprague-Dawleyラットの雌雄におけるUbc9の局在の差は認めなかった。昨年の免疫共沈降法による実験で、COUP-TFI/Ubc9が複合体を細胞内で形成していることを考え合わせると、副腎皮質球状層においてCOUP-TFIおよびUbc9は共に複合体を形成して機能していることが推察された。 2.ステロイド合成酵素遺伝子の発現調節に及ぼすCOUP-TFI,Ubc9の役割の検討 1)アルドステロン合成酵素CYP11B2遺伝子プロモーター領域の検討 上記の副腎皮質球状層におけるUbc9の特異的な局在から、COUP-TFI/Ubc9によるアルドステロン合成における役割が示唆された。そこで次に、DNAse footprinting法により、ヒトCYP11B2遺伝子プロモーター領域における蛋白結合部位を検討した結果、いくつかのcis-acting elementが同定された。その中でも、-129/-114配列(Ad5)に着目してゲルシフト法を施行した結果、Ad5配列にCOUP-TFI,SF-1が共に相互拮抗的に結合することが示された。 2)Transient transfection assay ヒトCYP11B2遺伝子のプロモーター領域(-1521/+2)にluciferase cDNAを連結したレポータープラスミドを作製して、ヒト副腎皮質由来H295R細胞を用いてtransient transfection assayを施行した。その結果、COUP-TFIは一般にrepressorとして知られているにもかかわらず、CYP11B2レポーター活性を用量依存性に増加させることを見いだした。さらに、Ubc9を共発現させると同活性化が増強されたことから、Ubc9がCOUP-TFIの新規coactivatorとして機能することが見いだされた。
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