平成16年度は、ストレプトゾトシン65mg/kg腹腔注によって糖尿病を誘発したラットから分離した傍糸球体(JG)細胞において、圧依存性プロレニン産生・分泌制御機構におけるphospholipase D (PLD)経路およびphospholipase C (PLC)経路の役割を検討した。PLD阻害薬である100μmol/LのAEBSFで前処置した糖尿病ラット由来JG細胞に12時間の圧を負荷した際、40mmHgの慢性圧負荷により、RSRは42.7±1.4から38.5±2.8%へと有意な変化を示さず、PRSRも16.9±2.3%から21.0±2.3%へと有意な変化を示さなかった。また、ARCは40mmHgの慢性圧負荷によって影響を受けず、圧負荷前後でそれぞれ39.7±2.1と40.4±3.4ng of Ang I・h^<-1>・million cells^<-1>であった.PRCも40mmHgの慢性圧負荷によって影響を受けず、圧負荷前後でそれぞれ57.1±4.0と60.2±8.5ng of Ang I・h^<-1>・million cells^<-1>であった.TRCもAEBSF処置による影響を受けず、40mmHgの慢性圧負荷前後で変化しなかった.これらの結果より、糖尿病ラットJG細胞において、AEBSFによるPLD阻害は、慢性圧負荷によるRSR減少反応、PRSR減少反応、ARC減少反応やPRC増加反応を抑制することが示された。また、糖尿病ラット由来JG細胞で、PLC阻害薬である200μmol/LのNCDCでの前処置は、12時間の圧負荷によるRSR減少反応やPRSR減少反応を抑制したが、圧負荷によるARC減少反応やPRC増加反応には影響を及ぼさないことが示された。以上より、糖尿病動物のJG細胞では、圧によるプロレニンプロセッシング抑制にPLD依存性経路が関与することが明らかとなった。
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