研究課題
基盤研究(C)
平成15年度までの研究成果により、加圧により細胞内にプロレニンが蓄積する機構が明らかにされたが、これら結果はまた、臨床で認められている高血圧による臓器障害にプロレニン蓄積が関与する可能性を考えさせた。2002年Ngyuenらは、ヒトの循環血中には存在せず主要臓器内にプロレニン受容体が生理的に存在することをJ Clin Invest誌に発表した。その物質は試験管内でプロレニンと結合して分子量を変えることなくアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシン1に変換する酵素活性(レニン活性)を誘導する。2003年Suzukiらは、プロレニンプロセグメントのハンドル領域に蛋白(抗体)が結合するとプロレニンが分子量を変えることなく分子立体構造を変化させてレニン活性中心を外部に露出するプロレニンの非蛋白融解的活性化現象を発見しJ Biol Chem誌上で発表した。我々の研究成果を含めたこれら3つの研究成果を基にして、平成16年度においては「病態において増加したプロレニンはプロレニン受容体による非蛋白融解的活性化現象を介して組織レニン・アンジオテンシン系を特異的に活性化する」という仮説を立て、糖尿病モデルにおいて検討した。糖尿病においては、(1)腎症や網膜症などの微小血管障害に先んじて血中のプロレニンが増加すること、(2)循環レニン・アンジオテンシン系が抑制されているにもかかわらずレニン・アンジオテンシン系抑制薬が腎保護に有効であることが知られていたが、そのメカニズムはいずれも不明であった。本研究の結果、糖尿病モデルラットの腎臓において、減少したプロレニンプロセッシング酵素発現によって増加したプロレニンは、そのハンドル領域において細胞内プロレニン受容体と結合して非蛋白融解的活性化現象を起こし、組織レニン・アンジオテンシン系を活性化させ臓器障害を引き起こすことが証明された。
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J Am Soc Nephrol 15
ページ: 1488-1494
J Clin Invest 114
ページ: 1128-1135