神経性食欲不振症患者において、血漿intact ghrelin値とそのdegradation profile、血漿ghrelinの糖負荷による変化を検討した。対象は14名のDSMIVを満たす患者(年齢:17〜37歳、BMI:9.0〜16.5kg/m^2、制限型7名と7名がむちゃ食い/排出型7名)で、6名の年齢をマッチさせた健常女性を対照とした。被験者を前夜21時以降の絶食にし、翌朝8時に採血し、intact ghrelin(1-28)はimmuno complex transfer EIAにて測定し、ghrelinのdegradation profileの検討には、octanoyl ghrelin(1-13)を認識する抗体と、grelin(14-28)を認識する抗体を用いたLinco社のRIAキットを使用した。糖負荷試験は、絶食後、10%ブドウ糖液、あるいは生理食塩水を500ml/2時間で経静脈性に投与して、投与前、投与後1時間、2時間に採血した。検査について説明し、文書でインフォームドコンセントを得た。神経性食欲不振症患者では、血漿intact ghrelin値は同年齢の健常人と比較して低下〜同等で、血漿octanoyl N-terminusやC-terminus ghrelinは健常人より有意に高く、degradation profileの健常人との差を認めた。intact ghrelin値は消化器症状を強く訴える患者で低い傾向を認め、胃粘膜病変によってghrelinの分泌の低下の可能性が示唆された。intact ghrelin値は血漿インスリン、成長ホルモン、血清インスリン様成長因子-I値とは有意な相関を認めなかった。血漿intact ghrelinは糖負荷によって健常人と同様に迅速に抑制され、糖代謝による分泌調節は温存されてた。本症患者では、既報のようにC-terminus ghrelinは健常人より有意に高いが、intact ghrelin値は同年齢の健常人と比較して低下〜同等であり、糖負荷によって健常人と同様に迅速に抑制された。intact ghrelin値が低下した患者では、ghrelinは治療薬になる可能性があると考えられた。
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