研究概要 |
はじめに)癌細胞が多剤耐性を獲得する機序のひとつにMDR1遺伝子の高発現があげられる。MDR1は核内ホルモン受容体SXRにより発現調節されるが、パクリタキセルなどの抗癌剤やリファンピシン(RFP)はSXRにリガンドとして結合しMDR1発現を増加させる。一般に変異受容体には正常受容体の機能を阻害するドミナントネガティブ作用がある。本研究は1)変異SXRの作成と機能解析、2)癌細胞に変異SXRを過剰発現させ内因性SXRの機能を阻害してMDR1発現が抑制されるかを検討し多剤耐性に対する遺伝子治療の可能性を探る。 方法)434アミノ酸SXRのC端13個を欠失した変異SXR(MUT-SXR)、野生型SXR(WTSXR)、そしてMDR1プロモーター領域を組み込んだMDR1-TK-LUCレポーターをCV1細胞にトランスフェクトしレポーターアッセイをおこなった。さらにMDR1 mRNA測定のためリアルタイムPCRを大腸癌細胞株LS174T細胞を用いておこなった。 結果)レポーターアッセイでRFP刺激によるWTの転写活性化はMUTにより抑制された。このドミナントネガティブ効果の機序を知るため2-ハイブリッド法によりcoacdvator(SRC-1)やcorepressor(NCoR,SMRT)とSXRの結合を検討した。SRC-1はWTとRFP依存性に結合したが、MUTとは結合しなかった。一方NCoRやSMRTはWTに比してMUTとより強く結合した。リアルタイムPCRによるMDR1 mRNA定量法を確立しLS174T細胞でMDR1 mRNAはRFP依存性に約5倍増加した(10μM)。 考察)MUT-SXRはドミナントネガティブ効果によりMDR1発現を抑える可能性が示唆された。現存LS174T細胞にMUT-SXRを過剰発現させた株を作成しリアルタイムPCRにてMDR1発現を評価中である。
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