1:ヒトAR発現マウス、ARノックアウトマウスの作製 雄性ARノックアウトSDH mutantマウス3匹を香港大学Chung博士より供与され、雌性BDF1マウスと交配し、heterozygousマウス35匹(雄性16匹、雌性19匹)を得た。ヘテロマウス同士を交配し、得られた産仔の尾部よりDNAを抽出し、PCR法によりARおよびSDH遺伝子の検索を行った結果、ARノックアウトマウス(KO)9匹(雄性3匹、雌性6匹)が得られた。次いで、雄性ヒトAR発現トランスジェニックマウス(Tg)と雌性KOを交配し産仔を得(雄性)、PCR法によりヒトAR遺伝子とマウスAR遺伝子のスクリーニングを行い、ヒトAR遺伝子およびマウスAR遺伝子パターンがheterozygousの雌雄を選別し(雄性4匹、雌性3匹)、交配させた。得られた産仔を同様にヒトAR遺伝子とマウスAR遺伝子をスクリーニングし、KO(15匹)およびTg(16匹)を得た。 2:神経機能、形態評価 生後8週令でTgおよびKOにストレプトトゾトシンの腹腔内投与(200mg/kg)を行い、2週後に血糖を測定し、350mg/dl以上のマウスを糖尿病群として実験に使用した。対照には、未処置のTg、KO群を使用した。運動神経伝導速度は、糖尿病Tg群で対照に比し有意に遅延したが、糖尿病KO群では、値阿庄との間に有意な差はみられなかった。腓腹神経の形態計測では、糖尿病Tg群では、対照に比し有意な有髄神経線維径の低下がみられたが、糖尿病KO群では、対照との間に有意な変化は観察されなかった。 3:今後の予定 AR遺伝子発現が糖尿病性神経障害の発症、進展に重要な役割を果たしていることが確認された。今後は、AR阻害薬やAGE阻害薬の投与など、治療効果を検討すると共に、より詳細な発症機構の解明をめざす予定である。
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