研究概要 |
ATP感受性K^+チャネル(K-ATPチャネル)はスルフォニル尿素薬受容体であるSUR(sulfonylurea receptor)と内向き整流KチャネルKir6.2の異種複合体として構成されている。これらのサブユニット蛋白間の情報伝達には細胞内Ca^<2+>が抑制的に働くことをすでに明らかにしている.その重要な調節因子は細胞膜のphosphatidylinositol4,5-bisphosphate(PIP_2)である.PIP_2が減少すると,K-ATPチャネル活動が低下し,PIP_2を増加させるとチャネル活動の上昇が観察された.PIP_2はチャネル活動を維持するためには重要な働きをしていると思われる.さらに,受容体刺激などでPIP_2の濃度が減少すると,チャネルが抑制されることが明らかになった.この機序は従来提唱されていた細胞内代謝によるチャネル調節機構(代謝依存性経路)とは異なった経路(受容体作動性経路)にてこのチャネルが制御されていた.β細胞ではK-ATPチャネルはグルコース刺激インスリン分泌の中心的蛋白として重要であるが,受容体刺激によるチャネル抑制の機序は神経性インスリン分泌刺激機構にK-ATPチャネルが関与していることを示唆している.この機序の破綻は糖尿病(インスリン分泌不全)の原因としても注目される.自律神経としての副交感神経伝達物質であるアセチルコリンを適用すると,β細胞は脱分極して活動電位を発生した.これはK-ATPチャネルが抑制されたためであった.アセチルコリンは細胞膜PIP_2濃度の減少をもたらし,K-ATPチャネルの細胞内ATPへの感受性を増加させることが明らかになった.
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