インスリン反応性に必要な分子の同定 脂肪細胞分化過程における、GLUT4の細胞内局在のための機構、高度にインスリン反応性である細胞内小胞の誘導、GLUT4トランスロケーション能力亢進などのインスリン反応性にとって必要な条件の発生時期や誘導条件を3T3-L1細胞と3T3-C2細胞を用いて確定し、Affmetrix社のDNAチップを用いて脂肪細胞分化の各段階における遺伝子発現変化を比較検討した結果、高度なインスリン反応性が観察される条件に共通して変化が認められる分子のリストを作成した。既知の分子では、約100〜150個のそれぞれ増加そして低下する分子を同定している。EST群では、増加または低下する遺伝子をそれぞれ約200〜300個取り上げている。さらにラット筋肉を用いてDNAチップによる遺伝子発現データと対比し、まず細胞内シグナル伝達と転写調節に関わると予想される分子について、ウェスタンブロティング法あるいはノザンブロティング法により、遺伝子発現について確認した。3T3-L1細胞と3T3-C2細胞においてインスリン反応性の亢進する条件で発現が増加し、筋肉においてもその発現が認められ、機能的には、脂質代謝調節に深く関わりしかも細胞内GLUT4小胞にも局在するとされている分子の発現調節を担うと考えられる一つの転写因子を見いだし、脂肪細胞内の脂質代謝調節と糖代謝調節の細胞内構造物的接点である可能性があると考え、その生理的意義について現在追究している。また、炎症に係わると考えられる遺伝子、GTP結合蛋白に連関する遺伝子群、シグナル伝達に係わる遺伝子、細胞外マトリックスの遺伝子などの発現変化が確認され、それらの脂肪細胞分化に関与する既知の転写調節システムとの関連性を検討するとともに、未知のGLUT4トランスロケーション機構に関連する脂肪細胞分化調節機構の存在の可能性について検討している。
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