研究概要 |
SR-PSOXは2000年に私共のグループにより発見されたマクロファージに強く発現される新規酸化LDL受容体である。SR-PSOXの発現調節に関しては、これまで明らかでなかったが今年度の研究により、酸化LDLおよびインターフェロン・ガンマにて発現が誘導されることが明らかとなった。また、ヒト頸動脈内膜剥離術およびヒト冠動脈方向型アテレクトミーにて得られた組織におけるSR-PSOXの発現を免疫組織学的に検索したところ、検索したすべての頸動脈内膜肥厚部において、マクロファージのみならず、一部の内膜平滑筋細胞にもSR-PSOXの発現が認められた。特に、粥腫部分の泡沫細胞化をきたす平滑筋細胞および冠動脈カテーテルインターベンション後再狭窄病変を構成する多形性の平滑筋細胞に強い発現が検出された。これらのSR-PSOX陽性平滑筋細胞とマクロファージは細胞外基質を分解するマトリックメタロプロテアーゼ(MMP-3,MMP-9),および催アポトーシス因子(Bax)を共に発現していた。中膜の平滑筋細胞、あるいは内膜の線維性肥厚部に散在する小型の平滑筋細胞ではSR-PSOXの発現は検出されなかった。ヒト頸動脈ならびに冠動脈においてマクロファージおよび形質転換を生じていると考えられる一部の平滑筋細胞でSR-PSOXの発現がみられ、BaxやMMPsを共発現していたことから、SR-PSOXを介した酸化LDLの取り込みによるBaxおよびMMPsの誘導がプラークの破綻に関与することが考えられた。また、冠動脈PCI後の再狭窄病変を構成する平滑筋細胞にもSR-PSOXとMMPsの共発現を認めたことより、PCI後の再狭窄病変形成過程においても平滑筋細胞の遊走を調節することなどにより、病態の進展に寄与している可能性が示唆された。
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