研究概要 |
SR-PSOXは2000年に私共のグループによって発見されたマクロファージに発現される新規酸化LDL受容体であるが、その後、膜貫通型ケモカインCXCL16と同一分子であることが明らかとなった。平成14年度までの研究により、SR-PSOXはガンマインターフェロンや酸化LDLで発現が誘導されること、また、ヒト動脈硬化プラークにてSR-PSOXの発現とマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9,MMP-3および催アポトーシス因子Baxとが共発現すること、などが明らかにされてきた。今年度の研究により、SR-PSOXが細菌の接着をも支えること、膜貫通型SR-PSOXは、CXCR6を発現する活性化Tリンパ球の接着に対する接着能を有することが明らかとなった。また、そのSR-PSOX分子上の接着部位は、N末端に近いCXCケモカインドメインにあること、またそれは酸化LDL、細菌、CXCR6いずれに対してもほぼ同じ領域に重なっていることが示された。また、SR-PSOXと同様にムチンドメインをもち、膜貫通型ケモカインとして作用するフラクタルカイン(CX3CL1)についても検討したが、従来から報告される通りCX3CR1に対する接着能を有するものの、酸化LDL、細菌、CXCR6いずれに対しても接着能は示さず、これらの機能はSR-PSOXに特異的なものであることが示された。さらに、SR-PSOXは、炎症性弁膜疾患の弁を覆う内皮細胞および新生血管の内皮細胞にも発現されること、そしてSR-PSOXの発現部位には活性化されたCD8+Tリンパ球の集積がみられることなど、SR-PSOXの多面的な役割が明らかになった。
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