研究概要 |
SR-PSOXは2000年に私共のグループによって発見されたマクロファージに発現される新規酸化LDL受容体であるが、その後、膜貫通型ケモカインCXCL16と同一分子であることが明らかとなっている。本研究により、SR-PSOX/CXCL16はガンマ・インターフェロンや酸化LDLで発現が誘導されること、ヒト動脈硬化プラークにてSR-PSOX/CXCL16の発現とマトリックスメタロプロテアーゼMMP-9,MMP-3および催アポトーシス因子Baxの発現とが共在すること、細菌およびCXCR6を発現する活性化Tリンパ球を接着することを明らかにした。また、SR-PSOX/CXCL16分子上の接着部位は、N末端に近いCXCケモカインドメインにあり、複数の異なるリガンドである酸化LDL、細菌、CXCR6いずれに対してもほぼ同じ領域に重なっていることが示された。また、SR-PSOXと同様にムチンドメインをもち、膜貫通型ケモカインとして作用するフラクタルカイン(CX3CL1)についても検討したが、従来から報告される通りCX3CR1に対する接着能を有するものの、酸化LDL、細菌、CXCR6いずれに対しても接着能は示さず、これらの機能はSR-PSOX/CXCL16に特異的なものであった。さらに、SR-PSOX/CXCL16へのCXCR6の結合によりインテグリンVLA-4が活性化されVCAM-1への接着能が増強すること、ガンマ・インターフェロンの産生が増大することをみいだした。そして、炎症性弁膜疾患の弁を覆う内皮細胞および新生血管の内皮細胞にも発現され、その発現部位には活性化されたCD8^+Tリンパ球の集積がみられることなど、SR-PSOXの多面的な役割を明らかにした。
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