研究概要 |
24週齢マウスの膵臓切除断端を異種である絹糸で結紮すると、限局的な炎症がおこる。反応性肉芽腫によって絹糸が被覆される前に、結紮により集中した膵管から膵再生が惹起された。この時pdx-1陽性細胞や移行細胞が確認され、これらが増殖分化し膵腺房細胞が形成された。再生反応は炎症の消退とともに減衰した。絹糸による膵再生が以前の膵炎モデルにおける再生と異なる点は、1)絹糸は膵断端に結紮されており、限局した炎症しか起こさない。2)惹起された再生反応は、絹糸の結び目から遠ざかる方向性を持っているため、絹糸が惹起した炎症が及ばず、組織破壊は新生膵内でほとんど見られない。またアポプトーシスもなかった。この方向性のある再生反応を応用し、外因性成長因子で増殖分化促進させる装置(Regeneration Reactor)を開発した。装置は再生惹起の絹糸、空間確保のシリコンチューブ、そして成長因子供給装置よりなる。絹糸は自身が惹起する炎症により周囲臓器に癒着するため、シリコンチューブで周囲空間を確保したが、これにより再生が促進された。この空間効果は再生に重要な因子である。FGF7は膵管増殖,作用を持つ因子のひとつであるが、発現は炎症に呼応して減衰する。FGF7が再生継続に関与する可能性を調べるため、FGF7産生前脂肪細胞を絹糸に固定し膵断端に移植した。移植細胞は臓器に移行しFGF7を産生していることが確認された。1ヶ月後、膵再生をPCNA陽性細胞の定量により評価したところ、膵再生が促進していた。次にRegeneration Reactorの臓器普遍性を調べる目的で、発生の異なる臓器として腎臓を選んだ。腎臓本体切断後の尿管に同装置を設置したところ、ネフロンが数個誘導され、RRが基本的再生を起こす装置であることが証明できた。FGF7供給により集合管の分岐が促進されたが、ネフロン増加までは至らなかった。Tubulogenesisは他の因子との共役が必須である。以上より臓器再生装置の原形を完成した。今後完全再生に関与する成長因子の同定を行う。
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