adipose differentiation-related protein(ADRP)は肝細胞やマクロファージ(MΦ)を含む種々の細胞に発現し、多くの組織で細胞内脂肪蓄積に関わる。マウスMΦRAW264.7細胞をPMAで刺激するとADRP mRNAの発現が有意に増加した。この細胞でADRP遺伝子のpromoter活性を測定すると、-2090〜-2005 bpの領域にPMAの作用点が見出された。この領域に存在するPU.1/AP-1複合配列りPU.1 site及びAP-1 siteを変異すると、変異promoterではPMAによる増強効果が低下した。ゲルシフト解析(EMSA)より、MΦではこの複合配列にPU.1とAP-1が協調して結合することがpromoter活性発現に重要であると判明した。一方、マウス肝細胞NMuLi細胞では、PPARγリガンドによりADRP mRNAの発現が増強した。この細胞におけるpromoter解析で-2090〜-2005bpにPPARγの作用点を見出したが、明らかなPPAR応答配列はみられなかった。しかしPU.1/AP-1複合配列を変異すると、promoter活性のPPARγリガンドへの応答性が減弱し、さらに、EMSAではPPARγリガンドで処理した細胞の核蛋白でAP-1による複合体形成が増強した。PPARγリガンドによるADRP mRNA発現増強効果はPI3 kinase阻害剤で阻害されたが、PKC阻害剤やMEK阻害剤では阻害されなかった。従ってPPARγはPI3 kinaseを介してAP-1活性を増強し、ADRP遺伝子発現を増強すると考えられた。 ADRP遺伝子はPU.1/AP-1複合配列を介して組織により異なる機序で制御されている。ADRPの組織特異的制御を介して、過剰な細胞内脂肪蓄積の病態への介入が可能になるかもしれない。
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