研究概要 |
細胞コレステロール搬出にかかわるアポリポタンパク質レセプターならびに細胞内情報伝達系の解析のため、主に各種培養細胞を用いた実験を行い、以下の成果を得た。 1)ヒトABCA7遺伝子からは、スプライシングによって2種類(type I, II)のmRNAが産生されること、組織によってこれらの発現パターンには差のあること、type I cDNA由来のタンパク質は主に細胞膜に分布し、アポリポタンパク質依存性HDL新生反応をもたらすのに対し、type II cDNA由来のタンパク質は主に小胞体に分布し、HDL新生に関与しないことを明らかにした。 2)アポAI依存性HDL形成のないヒト由来細胞株293にヒトABCA1-GFPを導入した。GFPの蛍光強度を指標に高発現株を選択し、非常に高いアポAI依存性HDL形成能を持つクローンを得た。 3)ABCA1と高い相同性を持つABCA7(正確にはABCA7 type I)のアポリポタンパク質依存性HDL新生反応に関する機能を調べるため、ヒトABCA7-GFPについて同様に293の高発現株を分離し、これもコレステロールとリン脂質の両方を含むHDLを産生すること、しかし各種薬物への反応性はABCA1-GFP発現細胞と必ずしも一致しないこと等を明らかにした。 4)ヒト線維芽細胞WI38を用い、アポAI刺激によってPKCの活性化の起きること、PKC阻害剤の添加でアポリポタンパク質依存性HDL新生反応が抑制されること等を示した。 5)マウス単球性白血病細胞RAW264を用い、アポAI依存性HDL新生反応の惹起には、脂質を含まないアポAI分子が必要であることを示した。 6)RAW264を用い、カルシウム拮抗薬であるverapamilがアポAI依存性HDL新生反応を増強すること、そのメカニズムは今まで報告されていない経路によるABCA1転写促進であることを明らかにした。
|