まず、38週齢のApoE(-/-)OPG(-/-)マウスおよびApoE(-/-)OGP(+/+)マウスの血清生化学データを解析した。雌雄ともに、血清Ca、Pおよび中性脂肪は両群間で有意な差を認めなかったが、血清総コレステロール値は雄性のApoE(-/-)OPG(-/-)マウスでApoE(-/-)OGP(+/+)マウスに比して有意に高値を示した。また、血清アルカリホスファターゼ(ALP)は、雌雄ともにApoE(-/-)OPG(-/-)マウスでApoE(-/-)OGP(+/+)マウスに比して著明な高値(約10倍)を示した。ApoE(-/-)OPG(-/-)マウスにおいて骨吸収の亢進による骨粗鬆症を17週齢において確認していることから、血清ALPの上昇は、OPG欠損による骨代謝回転の亢進によるものと考えられた。両群におけるプラーク石灰化病変を組織学的に解析したところ、両群ともに石灰化病変の形成に軟骨化生が関与していることが明らかにされた。さらに、ApoE(-/-)OPG(-/-)マウスおよびApoE(-/-)OGP(+/+)マウスの大動脈から血管平滑筋細胞(VSMC)を初代培養し、各々の細胞における軟骨分化マーカー遺伝子の発現をreal time RT-PCRで解析したところ、ApoE(-/-)OPG(-/-)マウス由来のVSMCにおいて2型コラーゲン遺伝子の発現が、ApoE(-/-)OGP(+/+)マウス由来のVSMCに比し有意に上昇していた。以上のことから、OPG遺伝子の欠損は動脈壁における軟骨化生を促進することにより、動脈硬化性石灰化病変の形成を促進する可能性が示唆された。したがって、OPGは骨代謝のみならず、血管石灰化の調節にも関与している可能性が明らかにされた。
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