1 食事療法のみでコントロールされている2型糖尿病患者のうち、年齢、性、肥満度、血清脂質およびHL-514遺伝子多型をマッチさせたTaq IB遺伝子多型の異なる3群(B1B1、B1B2、B1B2)各20例、計60例を対象として血清HDL-C濃度との関係について調べた。その結果、糖尿病のCETP B2B2遺伝子多型が血漿HDL-C濃度増加に関与する重要な遺伝子多型であることが判明した。但し、糖尿病では元来血漿内コレステリルエステル転送が障害されており、この結果が直ちに動脈硬化惹起性に対して抑制的に作用するかどうかは不明であると考えられ、コレステロール逆転送系全体の立場からさらに検討する必要が生じた。実際に、血漿内コレステロール転送率を測定した結果、同じB2B2遺伝型を有する非糖尿病例に比して、2型糖尿病ではCETRが約20%程度低下していることが明らかとなった。このことは、B1遺伝型に比較してB2遺伝型は血清HDL-C濃度増加に寄与しているものの、HDLのコレステロール転送能という立場からは正常に働いていないことを意味している。今後はHDL-C濃度およびHDL機能低下に関わる遺伝的背景についてさらに検討する必要があると考えられた。 2 心臓カテーテル検査を施行した2型糖尿病のうち、中等度以上の狭窄病変を1箇所以上有する例を抽出し、それらのうち、年齢、性、血清脂質およびHL-514遺伝子多型をマッチさせたTaq IB遺伝子多型の異なる3群(B1B1、B1B2、B2B2)各20例、計60例を対象について遺伝子多型と狭窄病変との関係を検討中である。まだ結論は出ていないが、少なくとも単一でTaq IB遺伝子多型の違いと狭窄病変との間には有意な相関は認められていない。しかし、HDL-C低下との相関は存在していることよりHDL-C低下に関与する複数の遺伝子多型の相互作用と動脈硬化惹起性との関係について検討する必要があると考えられた。
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