研究概要 |
私どもはSTAT6(-/-)マウスが加齢とともに内臓脂肪優位の肥満をきたすことを見出した。肥満の程度は雄性マウスの方が顕著であり,30週齢以降では高血糖,高脂血症などヒトの内臓脂肪症候群と類似した病態を示す。STAT6欠損と肥満を結びつける機序は明らかではないが,STAT6(-/-)マウスの摂食量はwild typeマウスより有意に多く,食欲調節機構の異常が示唆されている。 STAT3は視床下部レプチン受容体の主要な食欲抑制シグナルであることが証明されているが,STAT6の関与については明らかではない。そこで,マウスの視床下部においてレプチンがSTAT6の活性化を引き起こすかどうかを,抗リン酸化STAT6抗体を用いたWestern blottingと,electrophoretic mobility shift assayで検討した。C57BL/6マウスの側脳室中にレプチンを注入すると,30分後および60分後に視床下部弓状核においてSTAT3の活性化が認められたが,STAT6の活性化は検出されなかった。したがってSTAT6のレプチン受容体シグナル伝達への関与は否定的と考えられる。 STAT6はIL-4受容体およびIL-13受容体の重要なシグナル伝達因子である。これらの受容体のシグナル欠損が肥満の成立に関与している可能性を明らかにするために,IL-4欠損マウスおよびIL-13欠損マウスの体重および糖代謝を検討した。しかし,いずれも30週齢まで有意の肥満は示さず,糖尿病発症も認められなかった。さらに,IL-4およびIL-13をともに欠損するマウスを作成し検討したが,体重および耐糖能にwild typeとの有意差はみられなかった。
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