研究概要 |
STAT6(-/-)マウスは加齢とともに内臓脂肪優位の肥満を来たし,30週齢以降は空腹時および糖負荷後の高血糖を呈した。15〜22週齢で高インスリン血症が認められ,組織学的に膵島過形成が証明された。β細胞面積は同週齢同性のWild typeマウスの2〜3倍に増加していた。しかしインスリン抗体を用いた免疫染色では染色性が低下しており,インスリン脱顆粒をきたしていることが示唆された。顕著な脂肪肝を呈しており,小葉中心帯に脂肪顆粒がみられたが,繊維化や小葉構造の破壊は認められなかった。以上の様にSTAT6(-/-)マウスは病態および組織像がヒトの肥満・2型糖尿病と極めて類似していた。血管合併症の検索では,45週齢の糖尿病マウスにおいても動脈硬化像は軽微であり,糸球体硬化や尿細管障害の像はみられなかった。 肥満マウスでは血中レプチン濃度が上昇しており,レプチン抵抗性の存在が示唆された。血中アディポネクチン濃度にはwild typeマウスと有意の差は認められなかったが,内臓脂肪蓄積や脂肪肝の成立との関連についてはさらに検討中である。 ヒトの遺伝子解析ではSTAT6遺伝子-790部位のGT反復多型と肥満との関連が認められた。この関連は男性においてのみ有意であり,STAT6(-/-)マウスの性差に対応すると考えられる。Dual-Luciferase reporter assayではこの多型がプロモータ活性を変化させなかったことから,連鎖不均衡にある多型の検索を要する。
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