研究概要 |
本研究の目的は、乳癌発症における内分泌撹乱物質の関与を調べる事である。 我々は以前よりオーファン核内受容体であるsteriod and xenobiotic receptor(SXR)に、タモキシフェンやPCBなど多くの脂溶性物質が結合する事を確認していた。SXRは乳癌細胞にも発現しており、薬物代謝に関与するcytochrome P450(CYP)3A4の活性化に関与する事が知られている。そこで,乳癌細胞におけるポリ塩化ビフェニル(PCB)によるSXRを介したCYP3A4の転写調節について解析した。ER,SXR陽性乳癌細胞株MCF-7にCYP3A4-SXRE-Lucレポータープラスミド及び,SXR発現ベクターを遺伝子導入し,10^<-12>〜1^<-6>Mの、PCB(5005)及び10^<-11>〜10^<-7>MのPCB(126)存在下に培養しレポーターアッセイを用いて転写活性を解析した。 SXRを介するCYP3A4の転写は、タモキシフェン濃度及びSXR用量依存的に活性化された。また、CYP3A4の転写活性はPCB添加により濃度依存性に活性化された。 本研究により,乳癌細胞においてタモキシフェン、およびPCBはSXRを介しCYP3A4の転写を誘導することを明らかにした。従って,内分泌かく乱物質は乳癌治療に用いる薬剤を代謝し,その効果を減弱させる可能性が示唆された.また,PCBは乳汁中に蓄積することが知られることから,内分泌かく乱物質が乳癌の発生に関与する可能性も示唆された。
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