研究概要 |
近年、開心術においてblood cardioplegiaをはじめとする心筋保護法の進歩と共に、常温体外循環が選択されつつある。これは、低体温体外循環に比べて、末梢循環不全や凝固機能障害等が少ないためとされている。しかし、常温体外循環では、低体温体外循環に比べ炎症性サイトカインが多く放出され、それによる心、肺などの臓器障害が懸念される。そこで、アナンダマイドなどを吸着するとされるポリミキシンB固定化カラムを体外循環に組み合わせて使用し、その有用性を検討した。【方法】体重約25kgの豚を用い,血液800ml輸血下に体外循環を確立した.実験を,常温体外循環を行ったcontro1群と,常温体外循環下にエンドトキシン吸着を行ったPMX群との2群に分けた.大動脈遮断後,速やかにblood cardio plegiaを15分毎に2分間ずつ注入した.大動脈遮断時間は34分とし,体外循環離脱後2時間まで観察し,心機能を測定,動脈血液を採取した.PMXは80ml/minで体外循環確立時より実験終了まで行った.遮断解除後心室細動を生じた場合電気的除細動を施行し,心拍再開後は100/minでVVI pacingを行い,DOA5γを持続点滴した.心機能は体外循環前からの回復率(%)で示し,動脈血液ガスは体外循環前後の数値を比較した.【結果】Emax,LVP,CO,-LVdp/dtはPMX群でcontrol群に比べ改善した.PaO_2(mmHg)は離脱2時間後では,PMX群が良好な値を示した.IL6,IL-8は体外循環前それぞれ基準値以下だったが,離脱2時間後にPMX群で低い傾向にあった.【まとめ】引き続き実験を継続するが,常温体外循環でもポリミキンシンB固定化カラムによるエンドトキシン吸着を行うことにより,虚血再灌流傷害を抑制し,心・肺の臓器障害を軽減した.
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