研究概要 |
エンドスタチンは、基底膜を構築するXVIII型コラーゲンのカルボキシ末端に由来する分子量約22kDの蛋白質であり、強力な内因性の血管新生阻害作用を示すことから、抗がん剤としての開発が進められ現在第II相の臨床試験段階にある。エンドスタチンの作用としては血管内皮細胞の増殖、遊走阻害やアポトーシスの誘導などが観察されているが、作用機構は依然として明らかにされていない。一方ヒト、マウスなどの血中にはエンドスタチン様のフラグメントの存在がELISA法により確認されており、がんなどの病態やがんの転移と血中濃度との相関性が検討されている。我々はヒト血中のエンドスタチンの性状を明らかにするために血清からのフラグメントの精製を行い、アミノ末端シークエンスによりXVIII型コラーゲン由来のフラグメントであることを同定した。またシークエンスを基に組換え蛋白を293-EBNA細胞を用いて作成し、それらの組換え蛋白の血管新生阻害活性を検討するために血管内皮細胞の遊走阻害について検討した。 ヒト血清から単クローン抗体を固定化したアフィニティークロマトによりエンドスタチン様のフラグメントを精製すると、SDS-PAGEで主たる4本のバンドが検出され分子量は約32,29,24,23kDで何れも22kDのエンドスタチンより高分子であった。アミノ末端シークエンスにより既に報告されたエラスターゼ、MMP-9、カテプシンL, K, Bなどの分解によって生じるフラグメントとは全く異なっていることが示された。血清から精製したフラグメントの活性を評価するには量的に不足していたので、32,29,24kDのフラグメントに相当する組換え蛋白を作成した。ヒト臍帯静脈内皮細胞のVEGFに対するmigration assay系にて組換え蛋白の遊走阻害活性を評価したところ、3種のフラグメントともエンドスタチンに匹敵する阻害活性を示した。
|