局所進行乳癌(21例)および局所再発乳癌(10例)の31例に、docetaxel(DOC)による抗癌剤治療を行った。治療開始前に生検で採取した乳癌サンプルを対象に、real-time PCR法によってBRCA1、BRCA2、およびCYP3A4のmRNA発現量を定量的に解析し、DOCに対する感受性と比較検討した。その結果、BRCA1 mRNA発現量と治療効果に相関は認められなかったが、BRCA2 mRNA発現量に関しては、高発現群の奏功率25%に対し、低発現群では100%と、発現量と治療効果に相関(P<0.005)が認められた。また、CYP3A4 mRNAに関しても高発現群と低発現群の奏功率はそれぞれ10%、58%であり、発現量と治療効果に相関が認められた(P<0.05)。また免疫組織染色にてCYP3A4の発現を検討した結果、発現の認められた症例では奏功率は19%であったのに対し、発現の認められなかった症例では奏功率67%と、蛋白レベルでもCYP3A4の発現とDOCの感受性に相関が認められた(P<0.01)。メカニズムは不明であるが、BRCA2はDNA修復あるいはG2/M chcck point機能を介して、またCYP3A4はDOCの薬剤代謝を介してDOCの抗癌剤感受性に影響すると推測された。このようにBRCA2と、CYP3A4発現量は、DOCの感受性予測因子として有用であることが明らかとなった。
|