研究概要 |
【背景】 1)消化器癌症例において腫瘍組織内への免疫担当細胞(NK細胞、Tリンパ球)の浸潤は一般に少ない症例が多い。 2)Fractalkineは活性化血管内皮細胞上に発現し、接着分子としての機能と、そのレセプター(CX3CR1)を持つ単球、NK細胞、CD8^+Tリンパ球の局所への遊走活性を示す(Nature,1997;Cell,1997)。 3)癌におけるFractalkineの発現の報告はほとんどなく、大腸癌細胞株DLD-1における発現の報告を認めるのみで(Am.J.Pathol.,2001).癌組織におけるFractalkineの発現の意義は明らかではない。 【目的】: 消化器癌症例におけるFractalkineの発現を検索し、臨床病理学的因子との関係を明らかにする。 癌組織内での発現局在およびリンパ球浸潤との関係を検討する。 【方法と結果】: 1)大腸癌症例86症例におけるFractalkine mRNAの発現をRT-PCR法にて半定量的に検討し、臨床病理学的因子との相関を解析した。 2)大腸癌パラフィン包理切片において免疫組織染色を行い、Fractalkineの癌組織内の発現局在を検討した。大腸癌細胞のみならず正常大腸上皮細胞もFractalkine mAbで染色を認めた。 3)大腸癌臨床症例におけるRT-PCR法によるFractalkine m-RNAの発現とHE染色によるリンパ球浸潤との相関を検討した。 その結果Fractalkine mRNAの発現と腫瘍浸潤リンパ球は有意に相関し、腫瘍へのリンパ球浸潤の多い症例ではFractalkine が高発現していることが分かった。 【考察と今後の方針】 大腸癌臨床検体においてはFractalkine強発現症例では弱発現症例に比べ生存率は有意に良好であることが分かった。その理由としてFractalkine発現癌組織へのリンパ球浸潤が関与している可能性が示唆された。
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