研究概要 |
癌進展には血管新生が必要不可欠であることが従来より指摘されてきたが、その成立には様々な分子が関与していることが知られている。我々は多血管性肝癌臨床検体から、その高発現遺伝子としてTie2リガンドAngiopoietin-2をクローニングし、動物モデルを用いてその血管新生への関与を証明した(Tanaka et al. J Clin Invest 1999)。本研究では、まず肝細胞癌の臨床組織を用いた解析により、肝細胞癌の新生動脈血管において特異的にTie2が発現していることを証明した(Tanaka et al.Hepatology 2002)。次に、Tie2を発現している血管内皮細胞にAngiopoietin-2を作用させると、Tie2とp85 PI3K, Grb7との結合が増強し、survivin発現が亢進することを確認した。血管内皮細胞はAngiopoietin-2により細胞増殖能には変化を示さなかったが、アポトーシス抵抗性を獲得した。soluble Tie2遺伝子導入によりAngiopoietin-2シグル伝達系は抑制されマウス腫瘍モデルにおいて肝細胞癌のtumor dormancyを誘導することを見い出した(Tanaka et al.J Gastroenterology2003)。さらに、Angiopoietin-2/Tie2 シグナル伝達系を分子標的とした遺伝子治療の開発を始めている。 即ち、レセプター結合ドメインを欠損させた細菌外毒素遺伝子とAngiopoietin-2のキメラ遺伝子を作製し、血管内皮細胞培養で特異的な殺細胞効果を確認した。また、血管新生に関与するCCNファミリーに属するWISP1v(GenBank登録AB034122)、WISP3v(GenBank登録AB075040)を同定し、細胞浸潤の制御機能を持つことを証明した(Tanaka et al.Hepatalogy 2003;Tanaka et al.Gastroenterology 2003)。
|