研究概要 |
(目的)分割膵移植、心停止ドナーからの膵腎同時移植の臨床応用を目指し、自己膵、腎の温阻血・再灌流障害に対するFR167653の効果を検討する。 (方法)雑種成犬で腎虚血再潅流モデル、膵腎自己移植モデルを作成した。2群(FR投与群、無処置(C)群)に分け、FR群はFR167653:5mg/kg/hrを再潅流1時間前・3時間後まで持続静注した。腎機能、膵機能、腎・膵組織血流(TBF)、IL-1β mRNA、を経時的に測定し、72時間後に病理組織標本、TUNEL染色を行った。 (結果)1)FR167653による腎虚血再潅流障害の軽減 FR群ではCr, BUNともに上昇が有意に抑えられた(Cr(mg/dl);C群:4.58±0.73,FR群:2.12±0.44)。腎血流はFR群では再潅流3時間後には虚血前のレベルまで改善した(C群(ml/min/100g):12.9±1.7,FR群:17.5±1.4)。組織学的にはC群でFR群の7倍に及ぶTUNEL陽性細胞を認めた。またC群で中等度の尿細管細胞障害を認めたのに対し、FR群ではその程度は軽度であった。 2)膵腎自己移植モデルにおけるFR167653の膵腎機能保護効果 膵外分泌機能はAmylased(IU/L)がC群:2890,FR群:1950であった。末梢血単核球中OL-1β/GAPDHはC群:0.353±0.045,FR群:0.144±0.023で、膵組織中IL-1β/GAPDHはC群:0.476±0.009,FR群:0.202±0.006であった。病理組織学的にはFR群では、急性尿細管壊死、膵実質の炎症細胞浸潤が軽減されていた。 以上、大動物実験モデルにおいて、FR167653が虚血再潅流障害を抑制し、膵腎機能を保護することを示した。 以上の結果は日本移植学会、ASTSで発表し、現在英文論文として投稿中である。
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